いけばな嵯峨御流

6月12日。堺司所創立50周年記念祝賀会でのデモンストレーション

令和4年6月12日。ホテル アゴーラ リージェンシー 大阪堺で開催された、堺司所創立50周年記念の祝賀会に於いて、お祝いのデモンストレーションを「からころも」と題して行わせていただきました。在原業平をモデルにしたと言われている、平安時代の文学作品『伊勢物語』の中から、第9段「東下り」の巻に描かれている、三河国八ツ橋の情景を主なるテーマとして、舞台上にしつらえた花衣桁と景色いけで表現しました。花材はカキツバタ一色です。

「御所車」
デモンストレーションのはじめに、ご挨拶のあとまず御所車をいけました。松に芍薬・百合などの彩りを添え雅やかな世界への誘いの意を込めて。

『伊勢物語』
在原業平一行が東の国へと都を旅立ち、ようよう三河の八ツ橋のところへ着いた時に、一面のカキツバタを目の当たりにして、その場で詠んだ歌に一同感動の涙をこぼしたというお話。
その有名な歌は、「からころも きつつなれにし つましあれば はるばるきぬる たびをしぞおもふ」かきつばたの5文字が折り句となって詠まれ、そして慣れ親しんだ妻を都へ置いてきた切なさをもしみじみと感じさせる名句です。高貴な公達を連想させるのは、カキツバタの紫の色、紫は嵯峨御流伝書にも禁色の色・高貴な色として伝承されています。

「花衣桁」
花衣桁は、元東山公のお好みと言われ、着物を掛ける衣桁を床の間に見立てて、様々に花を飾れるよう工夫されたものです。流儀によりいろいろの型があるようですが、この花衣桁は嵯峨御流に伝わっているものです。
今日の設えは、向かって左、上から下へ神境、香炉、爵に一花一葉の花。中の柱に如意を掛け、半月花器にはいけ分けの姿。中央床板に据えた志野焼水盤に大株九花五行格と横姿二花で魚道分け。向かって右の柱掛けには六角籠に、「なみだ橋」と呼ばれる蜘蛛の巣とじ葉を流したいけかた。これは、生花で伝承されている「八ツ橋のいけ方」においても主人公在原業平の心を表す部分で、趣向を表す最も大事な要素として欠かせない一株です。3枚の葉を流して先を蜘蛛の巣とじのように丸め、花の後ろには業平の冠の纓と太刀を表す二葉を入れて追い葉とします。
花衣桁の脇に景色いけ沼沢の景でいけたカキツバタは、八つ橋の情景の余韻を表しました。

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