いけばな嵯峨御流

9月のいけばな

サイズ変更1509_P1新朝夕、虫の音が響き、秋らしくなってまいりました。9月の月刊嵯峨に掲載した作品は、文人盛です。早秋の実りの数々を、大振りの手付き籠に盛ってみました。熱帯ア
ジア原産の「くわずいも」は、食べられないお芋です。古い伝説に、弘法大師が修行で空腹に苦しんでいたとき、農夫に山芋を下さいと頼んだが、焼いた里芋を農夫が「食えない芋」と偽って、弘法大師に差し出さなかった。その芋は本当に食べられない「くわずいも」となって野生化したと言われています。このようないわれのある「くわずいも」ですが、お芋に見える部分は茎で、アロカシアの一種、成長が早く存在感のあるお芋の部分とみずみずしい葉は、いけばな花材としてとても魅力的な植物です。花屋さんでは、成長が早いくわずいもは、「出世芋」と呼んで開店祝いや事務所開きのプレゼントとして縁起物にされているとか。

 

 

月刊嵯峨9月号の門跡猊下のお言葉は「忘己利他(もうこ りた)」門跡猊下のご法話は次のとおりです。

「『忘己利他』これはわが国の天台宗の開祖である伝教大師最澄の言葉です。私たちには、他人のために何かをしてあげたい、困っている人に救いの手を差し伸べたいという気持ちがあり、それが利他行です。しかし、私たちが利他行をしても、相手がそれに感謝してくれないと失望し、時には相手に腹を立てたりします。親切にしたがた
めに相手を憎む羽目になってしまうことがよくあります。

最澄は、布施をするには、『三輪清浄の布施』でなければならないといっています。三輪とは布施を構成する三つの要素で、第一に施者の心が清浄であること、第二は受者の気持ちで、布施を受ける人がこだわりのない気持ちでいること。第三は施物で、布施で施す物が清浄であることを指します。この三輪の中で最も大事なことは、施者
の心なのです。無我の心で施しをすべきで、それが『己を忘れる』ことだと言っているのです。己を忘れたとき、相手に対して清浄な布施ができるのであり、それこそが慈悲なのです。」

花材 くわずいも 仏桑花(ハイビスカス) 鹿ケ谷南瓜 南瓜 茄子 瓜 ズッキーニ 獅子唐

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