いけばな嵯峨御流

華道総司所会員限定企画「遊花一日 夏期大学」のご報告

7月30日(土)、200名の会員を迎えて、「遊花一日・夏期大学」が 華道総司所芸術学院において開催されました。テーマは「造形美とIKEBANA」。外来講師は、京都嵯峨芸術大学講師多田千明先生、いけばなは私と服部孝月先生。午前中のデモンストレーションは、多田先生とのコラボレーションで、舞台上に前日からしつらえておいた板のオブジェに貝塚伊吹などを出合せ、大作制作を見て頂きました。花材は、杉板と、貝塚伊吹、ヘリコニアです。作品のテーマは「甦」、板状に変形された杉の幹を組み合わせて抽象的に神格化された巨樹をイ メージしました。作品制作中のBGMはJohn  Cage、工具の音を使った前衛的、実験的な音楽です。

午後の実技は、受講生各自が50cm角の鉛板を使った花留や花器の制作実習です。イトバショウ・クロトンの葉・アンスリウム・トクサを出会わせ、200人の作品は、皆それぞれに自分なりのテーマを表現されていて素敵な作品が出来上がりました。

学院玄関ホールには、多田先生の作品を2作展示させていただきました。正面大きな木彫の花の作品は、ゆうに7~8mの大きさで、テーマは「New Species」(新 種)。この作品には、糸芭蕉とアジサイを出合せました。もう一つの迫力ある赤い椅子の作品、テーマは「復活の芽」。この作品には大沢池の名古曽蓮を。名古曽蓮をいけた器は、2007年に京都嵯峨芸術大学の陶芸科を指導されていた池田八栄子教授が、大沢池の復活を祈念して池の土を混ぜて 創られたものです。2007年は奇跡的に大沢池に蓮が現れ、初めて観蓮節が行われた年でもあり、以来、現在まで10年間毎年観蓮節を迎え、大変嬉しいことです。今年の観蓮節は朝9時過ぎから大沢池畔で、象鼻杯が嵯峨御流会の方のご奉仕で行われました。

 さて、現在いけばなを飾る空間は、家の中だけに限らず、 野外あるいはデパートのショウウィンドウや舞台などなどあらゆる空間へ広がっています。時代や場の多様化にあわせて、いけばなも進化して現在に至る流れについて、私は明治維新後のいけばな界の動向について少しお話を致しました。明治維新・文明開化の影響を受けて起こった「前衛いけばな」と「いけばな新興宣言」についてです。

また、嵯峨御流華道総司所においても、造形的ないけばなを研究するグループ「鷁」が結成され、昭和43年に第一回「鷁」グループ展が開催されて以来、積極的に造形的ないけばなの研究がなされてきたことや、その後グループ「緂」が結成されてきたことなどもお話し致しました。嵯峨御流は1975年(昭和50年)以降毎年、梅田阪急百貨店の巨大なコンコースウィンドウに、年末から正月にかけて約半月間、迎春いけばな大作が展示され、それは現在まで続いていて、大阪市民に嵯峨御流が広く知られるところとなっています。

また、1985年(昭和60年)には、産経新聞社主催の「新進いけばな作家競作展」(現、いけばな新進作家展)が開催され、現在に至っています。今年、いけばな新進作家展は8月25日から30日まで、大阪心斎橋大丸北館14階において開催され、嵯峨御流から前後期に10名の方が出瓶されます。 

また、第二次世界大 戦後、いけばなの国際化についてもお話しました。それは、大戦後、進駐してきた外国人が、いけばなに対する興味を持たれたことです。進駐軍の御夫人方が、いけばなの技術を学ばれ、それを本国に持ち帰ったこともあって、いけばなの海外進出が著しくなったのがこの頃です。昭和27年 以降 三大流派(池坊・草月流・小原流)が海外へ日本文化普及にでかけ、昭和31年(1956)9月、いけばなを愛好する 外国人たちによって「いけばなインターナショナル」が結成さ れました。その創始者はミセス ゴードン・アレンで、彼女はGHQに勤務していたアレン準将の夫人。ミセス アレンは、はじめ小原流、のちに草 月流、池坊、嵯峨流の各流を学んだあと、この組織を創設されたのです。昭和36年には、それまで 三大流派のみが海外支部からの招聘をうけていましたが、この年に、嵯峨流の辻井弘洲先生・博州先生が 海外I.I.支部から招聘され、海外での指導活動に嵯峨御流が参加するようになったと、文献に書かれています。

現在、「いけばなインターナショナル」は世界50数か国161支部、7600名の愛好者をもち、日本には13の支部2000名が所属されています。

名誉総裁は高円宮妃殿下、5年 に一度 世界大会が日本で開催され、来年4月12日~16日まで第11回世界大会が沖縄で開催されることになっており、嵯峨御流もデモンストレー ションを行う事になっています。

 
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多田先生の作品「species」 に、芭蕉とアジサイ。

  
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多田先生の作品「復活の芽」に、名古曽蓮。

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