いけばな嵯峨御流

11月9日、「松田隆作 個展」を拝見しました。

いけばな作家 松田隆作先生の作品展が、麻布十番ギャラリーで開催され、拝見させて頂きました。テーマは「山桜Autumn Version」。山桜だけを使い、先生が一年を費やして、幹や枝を自らノミで削られた作品は、桜の魂が現れるような気魄の籠ったものです。また、削る最中に出た皮や肉で染めた様々な色の布の、コラージュも展示されていました。つまり、大きな桜の木の、全体を全て使い、命を全うされた作品展なのです。

先生のブログからお言葉を一部引用させて頂きます。

「http://info.ryusakumatsuda.com/?eid=59

個展2週目となりました。(中略)できれば映像ではなく実作を見ていただきたく思います。日々、山桜のヒビ割れが大きくなっています。まだ生きているのですね。

そのヒビは只今の日本、日本人、いけばな界を暗示しているような気がしてとても怖いです。

こわれた先に何が待っているのでしょう?

見て見ぬふりをして生きている今の私達。何かできるのでしょうか。」

 

私は、ギャラリーで先生からお話を伺いながら様々な思いを巡らしていました。

いけばなの背景には日本の美しい自然の風土があり、人はその自然があたりまえにあると思っているかもしれないが、いま、大切な風景が失われつつあるという事。これは、日々お花を通して自然と向き合っているからこそ感じる事かもしれません。お互いを思いやる事、違いを認めて尊敬し合う事、人は自然の一部であり、人も自然も全ての命は繋がって存在しているという日本の宗教観、その循環が途切れると環境破壊を招く事など。日本の伝統的文化であるいけばなが、生活と密着して日常生活の中で人々の美意識を高めてきたように、日々精進と自然を有り難く感じる心を取り戻さなくてはならないと思いました。

100年先の華道家が、今の私達と同じように、野分の風になびく尾花を見て詩情を覚え、月や雪や花の移ろう姿を愛でて命の輝きを感じられるように。

 松田隆作先生の個展は、11月14日まで開催されています。

麻布十番ギャラリーにて。10時から19時。最終日は17時まで。

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