いけばな嵯峨御流

11月5日。「第31回 国民文化祭あいち2016 。華道フェスティバル 記念講演・シンポジウム」に、パネラーとして出演させていただきました。

華道フェスティバル記念講演会・シンポジウムが、11月5日(土)13:30から16:00、愛知芸術文化センター12階アートスペースAで開催されました。

第1部基調講演は、京都の細見美術館館長 細見良行氏。テーマは「琳派400年―花遊びの系譜」。

第2部シンポジウム、テーマは「いけばなの未来」。パネリストは、細見良行氏、美術評論家 三頭谷鷹史氏、未生流中山文甫会副家元 中山高昌先生、石田流家元 石田秀翠先生、私、の5名。司会進行は、華道フェスティバル シンポジウム委員長 庄司信洲先生でした。

基調講演「琳派400年-花遊びの系譜」では、日本の美意識を象徴する琳派について大変興味深いお話を伺いました。

シンポジウムでは、まず司会の庄司先生から、国民文化祭あいちでは、「愛古知新」すなわち、伝統を愛し新しきを知り文化は動くというのがテーマになっている、日本の古典文学には世界に比べて多くの植物が登場するように、日本文化は花なくしては語れないといえる、という言葉で始まりました。

いけばなの表現において、うつろう自然の風姿を表そうとする立花に始まり、儒教などの思想を型とした生花、寓意に遊ぶ文人華、盛花、前衛いけばな、などいけばなの系譜を軸として、いけばなの未来について、様々な意見が交わされました。 

細見氏からは、雪月花に代表されるように日本人はうつろうものに心を寄せて来た。また、ジャポニズムが世界に与えた影響は、単に異国趣味で珍しいというだけではなく、西洋の考えを根底から変えてしまうほど大きかった、という話が印象的でした。100年前の日本美術は、西洋の印象派絵画、料理ではヌーベルキュイジーヌ等、あらゆる分野において、その考え方を根底から変えてしまうほどの影響力があったと同様に、いけばなが西洋のフラワーアレンジメントに大きな影響をあたえているのではないか、と話されたのです。

石田先生は、日本文学や哲学 仏教などにテーマを求めらて華展を度々開催されておられ、雪月花など、常に変化し移ろいゆくものに日本人の人生観が深く関わっていると話されました。

 

また、三頭谷先生は、近世から現代、そして未来へのいけばなの担い手は、女性であるとお話になりました。

次に、私の発言を記させていただきます。

「未来というテーマは、大事な問題です。現代は混沌とした時代ではありますが、私達がなくしてはならないもの、継承していかなくてはならないものがあると思います。いま、人類共通の問題は環境問題だと思います。丁度、今日(11月5日)は国連で定められた「世界津波の日」だそうです。また、昨日は「パリ協定」が発効されました。環境問題は深刻になっています。100年後、この美しい自然が残っているのかな?これは深刻な問題だと思います。私達は、風景そのものからインスピレーションを受けて制作し、野に出て花に触れ、生身のものでしか伝えられないものを芸術として表現している立場です。100年後の子供達が今と同じような気持ちで花を生けられる、そういう社会や風土を守っていかなくてはいけないのではないでしょうか。これは、一つの、華道家としての務めなのではないかなと思います。風景の元になっているのは、命の原点でもある水の流れ、山から海までの流れの、どこか一箇所が滞っても環境破壊につながるわけです。ですから、命の大切さや、すべてつながって循環して存在しているというような教えとともに、美しい風景を守っていかなければいけない、と思う次第です。いけばなで、身近などこにでもある自然の風景を美しくいけることで、それを見た人は、それに共感して、あぁこんな風景は守りたいな、という気持ちが起こるのではないでしょうか。自然を愛で慈しむ気持ちを起こしてもらう、という事は華道家としての務めなのではないかなと、このように思います。」

また、日本いけばなの今後の目標として発信されている、いけばなの世界遺産への登録、学校教育への参入、について皆様が意見を交換されました。

私の意見は「いけばなを世界遺産にというお話がありました。日本の宝である自然の営みからインスピレーションを受けて美しく表現し、人々に感動と喜びを分かち合う芸術であり、しかも芸術と社会や生活を結ぶことができる、いけばなの素晴らしさを伝えていくためには、やはり華道家一人一人が、光るものを表現してこそ、いけばなが世界遺産に、というような事に繋がるのではないかと思います。日本いけばな芸術協会のような組織の存在がそれを実現していけるのではないか、流派を超越して、一人一人の華道家の魂とエネルギーが一つの大きな渦となり(気運を高める)場となるのではないかと思います。」

中山先生は、日本の風土がいけばなにつながったと締めくくられました。日本いけばな芸術協会が発行している「こどものいけばな」に掲載されているように、五節句など年中行事に絡めながらいけばながありますから、幼少の頃から教育をして、花に触れるように育って欲しいと思う。そういう意味で、学校教育にいかに入っていくかというところが一番大事だと思うので、皆様も機会があれば教育関係者とお会いするなどして、お花が入れるようにお話をしてお願いして頂ければ大変有り難いと思います。また、今回のいけばな展には1万人以上の来場者があるという事ですが、若い人も来てくれるように考えて欲しいと思います。スマートフォンでFace Bookなども活用して行きたいと思いますと、広い世代へのいけばな文化の発信に言及され、閉幕となりました。

パネラーの皆様からは、大変興味深い、様々なお話を伺う事ができましたが、ここでは限られた一部分のご紹介になりましたことをお許し下さい。

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