1月2日。梅田阪急百貨店のウィンドウいけばなを手直しした後、7階美術画廊で、1月6日まで開催されている「木彫 福の神・福の仏展」を見てきました。ここで、不思議なお出会いをしました。
百貨店7階の一角、輝くようなオーラに誘われて会場に入ると、すぐにご子息の唯阿さんからお声をかけていただきました。お話ししているうちに、ウィンドウのいけばなを見て下さって、迫力あるいけばなだ、と仰ってくださいました。この画廊で、お正月に吉祥の木彫を30年間毎年展示されているとのお話を伺い、今まで出会わなかったことの方が不思議だと感じました。しかも、御父上の久保田唯心先生からは、大覚寺の本堂「五大堂」に安置されている五大明王を、ご自分のお師匠様と共に彫られたというお話しを伺い、また、仏像を見に様々なところへ足を運ばれるそうですが大覚寺の五大明王様は非常に素晴らしいとお話し下さいました。
今年の阪急コンコースウィンドウ7面の迎春いけばなのストーリーは、自然と人の調和によって実り豊かな一年を過ごす、というものです。自然の森羅万象を五大=地水火風空で表現したウィンドウと、このお出会いに仏縁を感じました!
大覚寺には、平安時代の仏像をはじめ鎌倉時代の大きなもの、そして人間国宝松久朋林様とそのご息子宗林様による五大明王像がお祀りされています。

新年あけましておめでとうございます。大覚寺の「お口祝の儀」で、私の一年が始まります
平成27年元旦、朝5時半。あらたまの年のエネルギーが満ち溢れる大覚寺境内。心経前殿では新年の法要が六座行われます。その二座目に当たる元旦朝5時半、まだ真っ暗な時間に行われる法要に、参列致しました。法要に続いて宸殿紅梅の間にて行われる「お口祝いの儀」では、執行長・檀信徒総代・嵯峨御流華務長が門跡猊下に新年の御祝詞を申し上げます。お口祝(おくちいわい)の間は、歳徳神の掛け軸が懸けられた祭壇に、嵯峨御流「若松七五三の伝」がいけられ、燭台の灯の揺らめきが厳かに金碧障壁画の梅の迫力を際立たせています。この神聖な儀式「お口祝」が終わり宸殿を出ますと、元旦の清新な朝日が昇りはじめます。別室にて大福茶のお薄を門跡猊下・内局様・井上総代様と共に楽しく頂き、食堂でお祝い膳を囲んで、寺内僧職の皆様と新年を言祝ぎ 私の一年は始まります。大覚寺を出るころには、境内は白銀の世界に包まれていました。今年一年、身も心も引き締めて、いけばなを通じて嵯峨天皇様の御心が広がり、世界平和につながることを願います
本年も、皆様と一緒に、一歩一歩前進して参りたいと思いますので何卒よろしくお願い申し上げます。


大覚寺華務職としての大事なお勤めの一つに、新年を迎える大覚寺の寺内挿花があります。12月30日に、西村強甫華道芸術学院長指導の下、嵯峨御流教授/派遣講師の先生方が、大覚寺内の挿花をいたしました。写真は、供待に挿花された作品です。中央の御題花は私がいけさせていただきました。
他の先生方は、お掃除の行き届いたお堂や門跡様のお部屋などに、いけばなを飾り、寺内は華やかさと荘厳さに包まれました。

梅田阪急百貨店コンコースウィンドウ7面・迎春いけばなをアップします。
7号「吉羊」きっしょう
「羊」の字は正面から見た羊の頭、上の点々は羊の角を表している。人類にとって羊は多くの実りをもたらしてくれる宝そのもの、すなわち羊は吉祥の代名詞として、古来「吉羊」の字が用いられた。また、「美」や「善」などの漢字にも「羊」が入っており、どの字もいい意味が含まれている。「群」という字にも「羊」が使われている
ように、温順で集まって仲良く暮らす羊を造形し、自然と人の調和により、豊かな実りを得る一年になるようにとの願いを込めた。
陰陽五行思想では、冬至の日に一陽が生じ、旧暦12月に二陽が生じ、旧正月(春節)には三陽が開泰すると考えられている。この三陽を「三羊」と表記することに因み、3つの羊をデザインした。
花材:コウモリラン・チランジア・アナナス・蘭・ジャノヒゲ・芭蕉の葉(金着色)


梅田阪急百貨店コンコースウィンドウ7面・迎春いけばなをアップします。
6号「天地」あまつち
地に根を張る南国のたくましい植物の間から見えるはるかな洋上に、ご来光を臨むイメージ。花材は、沖縄からアダンの実を送って頂いた。正月を言祝ぐ松の中でも、もっとも長い葉をもつ「大王松」を用いて。
題字の天地は、天=人、地=山水土。この字は、書家・瀬原篁冲氏が自然との調和をイメージして創作されたもの。
花材:大王松・レッドバインなどの蔓・アダンの実・タビビトノキの花・ドラセナ・
ブロメリア・モンステラ
アダンの実は、沖縄司所前司所長の新垣幸甫先生から頂いたものです。ご主人様と二人で自ら採取してくださった20個の実は、それだけでも貴重であるうえに、いけばなの姿になるようにと葉も軸が付いたものも入れて下さって、段ボール4箱は100㎏を超す重量でした。感謝

梅田阪急百貨店コンコースウィンドウ7面・迎春いけばなをアップします
5号「彩鳳」さいほう
宝珠をイメージした作品。宝珠とは、如意宝珠(にょいほうじゅ)と呼ばれ「意」の「如」く、すなわち「思いのまま」という意味を持つめでたい形。鳳凰の翼をイメージした造形を作品の一部に取り込みながら、宇宙へ広がるイメージを表現。題字の彩の頭には、書家・瀬原篁冲氏のイメージで宝珠が書かれている
花材:槇・落羽松気根(らくうしょうきこん)・千両・白キングプロテア・葉牡丹・海松・ヘリコニア

梅田阪急百貨店コンコースウィンドウ7面・迎春いけばなをアップします。
4号「緂々」だんだん
「緂」の意味は、白から次第に濃い色になる色の組み合わせ。森羅万象を表す五大では、火は燃え立ち、その熱によって万物を育 て、浄化する。この作品では色彩が渦巻きながら熱エネルギーを発するイメージを表した。
花材:ツゲ(着色)・流木の根(着色)・松・サンキライの実・海松・ヘゴ



梅田阪急百貨店コンコースウィンドウ7面・迎春いけばなをアップします。
3号「春風」しゅんぷう
風は万物の生育を助ける。様々な種類の梅の姿に春風のイメージを託す。バックパネルに書かれた白字の「風」は、題字を書かれている書家・瀬原篁冲氏とのコラボレーション
花材:梅・松・胡蝶蘭

梅田阪急百貨店コンコースウィンドウ7面・迎春いけばなをアップします。
2号「豊水」ほうすい
水は生命の根源であり生活の礎。とりわけ、日本では滝は神体として考えられてきた。遠景にサルスベリ・垂桑などで滝を表し、近景に柳・垂柳檜葉・福寿草・万年青などを配す。
花材:サルスベリ(銀着色)・南方竹の根(銀着色)・シュベルティー(銀着色)・スイリュウヒバ・柳・万年青・福寿草

梅田阪急百貨店コンコースウィンドウ7面・迎春いけばなをアップします
1号「夲」ほん
新年歌会始の御題「本」にちなんで。今年一年を<自然と人の調和>によって実り多い豊かな年としたい。この作品は、本から物語があふれだすようなイメージでいけている。題字は、本の俗字「夲」を選んだ。
花材:キャラボク・リュウゼツラン・斑入りサボテン類・ナンキンハゼ・仏手柑・サルオガセモドキ
こんなに大きなウィンドウにいける材料を探すのは、並大抵ではありません。たとえば、大きなリュウゼツランも、ウィンドウではこんな具合に収まっています。3段重ねた本の花器の、真ん中の段右端にいけているのがこれです。このリュウゼツランは、京都嵯峨芸術大学の許可を得て、採らせていただいたものです。

