雪がちらつく朝。寒行托鉢に出られる伝灯学院生の方々が、内局様や職員の皆様に見守られながらお寺を出発なさいました。
どうかお気をつけて行っていらっしゃいませ🙏🏻
1月20日。帝国華道院 第96回「いけばな大賞2023」表彰式と懇親会に出席しました。
東京 ロイヤルパークホテルで開催された、一般社団法人帝国華道院主催「いけばな大賞2023」表彰式・懇親会に出席しました。
わたくしは、格花部門の審査員としての講評を述べさせていただきました。
審査をさせていただいて、あらためて古典の型には美しい強さがあると思いました。流派の違いにより約束事は違えども練りに練られてきた美の力強さに圧倒される思いです。そして型を習熟するには長年かかりますが、身についた型を踏まえて型から超越し、自分の想いや見立て、など創意を込めた作品に、見るものの心は打たれるという点で、枝先まで気を抜かずにいけあげられた作品に、感動いたしました。
約1時間に及ぶ表彰式には、最優秀賞である内閣総理大臣賞以下様々な賞が披露され、学生の部では小学生、中学生、高校生、と分かれての表彰がありました。いずれの作品も、下準備は一切手をつけずに花材を持ち込み、会場でその場で一人だけで作り上げる、という決まりは、大人も学生も小学生も同じです。
流派、国籍、キャリア、を超越して、誰でも挑戦できる、「いけばな大賞」です。
今年も、沖縄司所の先生から、お庭の琉球寒緋桜を総司所にお贈り戴きましたので、早速華道芸術学院お玄関に飾らせていただきました。桜の左右は、龍吟虎嘯のしつらえです。
いま季節は大寒、能登半島地震で被災された方々が、雪の季節となりどれほど辛く寒い思いをなさっておられるかと思うと心が痛みます。
どうかご無事で、そして少しでも回復に向かうことを祈り続けます。
春の便りが、希望となって少しでも辛いお心を慰めとなりますように。
2024迎春花 解説
迎春花への想い
日本において伝統的におめでたいとされてきた意匠の数々、そこに込められた目出度さの意味を再認識して、いけばなで表現しました。このいけばなが皆様のお心に勇気とやる気、少しの憩いとなって伝わりましたならばこの上ない喜びでございます。令和6年の幸先良い門出を皆様とともに言祝ぐ迎春花でお迎えいたします。
初日の出に本年の幸せと順風満帆を願う「来光」
水は命の原点。水の源流である深山の風景「蓬莱」
甲辰歳 龍の勢いにあやかりたい「瑞祥」
直ぐなる杉のすくすく生える異形の美を再発見する「須久須久」
赤に繁栄と避邪の願いを託した「猩々」
陰陽和合の調和美。しつらえの遊び心「日月」
令和6年 御歌会始めの御題「和」にちなんだ「わ」
このようなテーマで、令和6年が健やかな一年でありますようにとの想いを込めて挿花いたします。
1号「来光」
新しい年の初めに昇る太陽を意とする「元旦」。旦は地平線からようようと顔をのぞかせる日の出の姿。
山上で迎える神々しいご来光の絵を掛け軸に見立てて、歳徳の神を迎える松に梅を添えて鷁首龍尾船(げきしゅりゅうびせん)にいけています。
ご来光にはこの年を幸せで良い年にと願う気持ちを込め、順風満帆に一年がすごせるようにとの想いから、よく水を渡る「龍」、風波に耐えてよく飛ぶ「鷁(げき)」の飾りをつけた
船花器を合わせました。
花材
松 梅
2号「蓬莱」
水は命の根源です。嵯峨御流では、山から海への連続した水の流れが自然の風景を作り出しているという発想をいけばなの型にした、「景色いけ 七景三勝」があります。このウィンドーで水の源流を生み出す「深山の景」を、表現しました。国土の7割以上を山岳が占める日本では、豊かな水の恩恵によりいたるところに多様な自然環境が生まれ風光明媚な景色がみられます。この多様で豊かな国の宝である自然環境を守り後世に伝えるためにも、水=命は連続しつながって存在しているという大切なことをいけばなで表現していきたいと思います。
花材
エゾマツ トドマツ キャラボク シラカバ ハルニレ オタフクナンテン ほか
3号「瑞祥」
令和6年は甲辰(きのえたつ)年。辰年の象徴でもある龍(たつ)は、霊妙な四種の瑞獣「四霊」または「四瑞(しずい)」の一つで四神とも相通じる伝説上の生き物です。海、川、山、炎、風、雲など、自然の姿や力を龍の姿と見て吉祥のあらわれと想いをよせる対象としてきました。龍とつく名や言葉も吉祥とされ天子や英雄のたとえにもされてきました。
四瑞とは麟(りん、麒麟)・鳳(ほう、鳳凰)・亀(き、霊亀)・竜(りゅう、応竜)。
このウィンドーでは 運気上昇、富と幸福をもたらすといわれる龍の姿を、南方竹の根を金色に染めて表現しました。
花材
南方竹の根 寿松 ユッカ 赤松 地湧金蓮 ほか
4号「須久須久」
杉は「スクスクと生える木」からつけられた名前。『古事記』応神条に「楽浪道(さざなみぢ)を須久須久(すくすく)と我が往(い)ませばや」と書かれていることから題字を須久須久としました。スクの語源はスクヤカ(健)の意であり「すくすく 滞りなく進む、勢いよく成長するさま」という意味もあります。
台杉という仕立て方は、もともと京都の北山の狭い敷地で北山杉のまっすぐな丸太を育てるために、杉の匍匐する性質を生かして考えられたものですが、現在ではその細い優美な容姿からもっぱら庭園観賞用とされています。観賞用台杉はシロスギという繊細な品種が用いられているそうです。
苔庭には一両から万両までの植物を配して、「〽千両万両有りどおし」(一年中お金に困らないの意)の狂歌にちなんだ植物を配しています。
花材
台杉 古木 オンシジウム 苔 一両:アリドオシ 十両:ヤブコウジ
百両 千両 万両 ほか
5号「猩々」
古い中国のお話。大変親孝行の男・揚子の里に住む高風(こうふう)の夢に、市でお酒を売れば富み栄えるというお告げがあり、お酒の商売をしたところ、高風はどんどんお金持ちになっていきました。その店にはいくら酒を飲んでも顔色の変わることのない客が市が立つごとに訪れ、不思議に思い名を尋ねると潯陽の海中に住む猩々だと名乗ります。
月の美しい夜、潯陽で高風が酒を持って猩々を待っていると、猩々が海中より浮かび上がって、酒を飲んでは舞い遊び、最後に猩々は汲めども尽きぬ酒壷を高風に与えて消えていく。
それは高風の夢の中での出来事でしたが、酒壷はそのまま残り、高風の家は長く栄えたといいます。まことにめでたいお話で、能の演目にもなっています。
能の猩々で用いられる赤い頭(かしら)と酒に酔った猿のような赤づくめの衣装を、猩々緋の色に染めたヤシの花序、猩々木(ポインセチア)などの花材で表しました。
花材
ヤシの花序 レッドウィロー ポインセチア ほか
6号「日月」
花衣桁は着物などの衣服を掛けるものをもとにして、いけばなを飾れるように趣向を凝らしてつくられたものです。もとは東山義政公の御好ともいわれていけばな各流派で用いられています。そこに飾られるものは、花器のほかに香炉 払子 如意 神鏡といったもので、それらは通常、床の間飾り、書院飾りに用いられるものです。それゆえに花衣桁には床の間、床脇、書院という建築様式が集約されているともいえます。花器は釣器・掛器・置器と、組み合わせと花材の変化でさまざまな楽しみ方ができます。ここでは、向かって右の花衣桁を「陽=日」、向かって左を「陰=月」と見て、陽側にはやや改まった飾り方で勢いよく伸びる紅梅を、陰側にはくつろいだ飾り方で満月花器から枝垂れる白梅をいけ、陰陽和合による調和を表しました。題字は日と月をあわせた「日月」としました。
花材
梅 水仙 蘭 ほか
7号「わ」
令和6年 宮中で催される新年御歌会始めの御題は「和」です。
ひらがなの「わ」は、「和」の簡略体であり、その意味合いは、やわらぐ、おだやか、のどか、あたたか、ととのう、したがう、静まる、ほど(節度)、仲が良い、和睦、等々このほか、夥しい字義があります。この作品で置器の亀花器にいけているのは、嵯峨御流 生花の「内用」という花姿。天地人三才の枝の働きの変化に魅力があり、その姿はあたかも、「わ」の字の形をしています。嵯峨御所好みの垂撥に掛けているのは真鶴の竹器。いけているのは結び柳です。結び柳の由来は「結す」と「産す」「生す」(ともに「むす」と読む)が通じていることから、また、新年と旧年を結ぶという意味も込められていて、さらに結び柳の丸く結んだ部分は「生命力の象徴」や「一陽来復」の太陽を現しています。
題字は和合、調和の意味をこめて、「わ」としました。
花材
石化柳 枝垂れ柳
いよいよ今年もあとわずかとなりました。
「先今年無事目芽出度千秋楽」
(まずはこんねんぶじ、めでたし せんしゅうらく)でございますね。
今年平穏に一年を終え、無事に千秋楽を迎えたこと、まことにおめでたく、一年を締めくくるにふさわしい言葉です。いや、おめでたいことばかりではなかったとしても、とにかく無事にやることはやり終えたので、希望を持って翌年を迎えることができることもおめでたいことです。
そして、私共 華道家にとりましては、いけばなに希望を託して良き年を迎えられるようにとの祈りも込め、正月花をいけることが年末の慣わしです。
嵯峨御流の皆々様と、花にこめた真摯な祈りの成就を信じ、さらなる精進を誓い、良き新年をお迎えできますようよう念じております。
良いお年をお迎えくださいませ。
写真のお山は愛宕山。麓に五山の送り火の一つ鳥居型が見えます。
右京区役所主催 いけばな✖️スケッチ教室 いけばな✖️写真教室
令和6年2月18日(日)、京都市右京区主催の小中学生対象 文化体験教室が開催されます。
嵯峨御流のいけばなを体験し、自分がいけた作品を、日本画家の先生ご指導のもとスケッチ画に、または写真家の先生による写真作品にすることを学びます。
このブログをご覧いただいている皆様から、右京区内に在住または右京区に通学している小中学生をご存知でしたら、お知らせしていただけましたら幸いです。
12月2日。阿倍野区いけばな協会の花展を拝見しました。
第53回阿倍野区たすけあい運動協賛いけばな展が、阿倍野区役所で開催されました。
嵯峨御流からは、会員の髙砂由利甫、小学生の髙砂いと 2名が出品されていましたので作品をご紹介いたします。
うめだ阪急コンコースウィンドーは、今クリスマスです。12月25日まで。とても大きなお人形などが沢山沢山動いていて、しかもマリオネットです!
圧巻のきらめきと、ファンタジーの世界にしばし日常を忘れてウィンドーに見入りました。
そして、クリスマスが終わると、26日の閉店後にいよいよ嵯峨御流が迎春花を挿花します。
60名の華道家と、20名ほどの職方さんたちが力を合わせて一晩で7面全てのいけばなを創り上げます。展示期間は12月27日から1月15日までです。毎朝、交代で15名ほどが協力して20日間の展示期間中メンテに当たります。
誰1人欠けても成し得ない大きな事業、チーム一丸となってわたくしも一緒に頑張りますので、お近くへお越しの際はぜひ梅田まで足を伸ばしてご覧下さいませ。
11月25日、全日本いけばなコンクール「いけばな大賞2023」の審査のため、北千住のシアター1010へ伺いました。担当したのは格花の部。そして、学生の部は審査員全員で審査をおこないました。
26日から、各部門の入賞作、力作が11月27日まで展示されます。小学生から高校生まで参加できる学生の部も大人に引けを取らない立派な作品です!さらに、いけばな作家の作品も前期26日・27日、後期28日・29日拝見できます。
「いけばな大賞」はどなたでも見学できますので、ぜひ会場にお運びくださると良いと思います。そして、どなたでも参加できますので、来年は挑戦なさってはいかがでしょう。
一般社団法人帝国華道院主催の「いけばな大賞」要項はこちらをご覧ください。
いけばな龍生展「植物の貌二〇二三」渋谷ストリームホールにて
11月24日から26日まで渋谷駅に直結する渋谷ストリームホールで開催された、龍生派のいけばな展を拝見しました。龍生派家元 吉村華洲先生といろいろお話しし、奥様にもお目にかかれました。
会場ホールの1、2、3階に分かれて、自由花、古典花が展示されるなか、一角には家元が考案された「ひびか」の体験スペースも設けられていました。すごい数の作品でしたが、ご紹介するのは、お家元の大作と、会場前に飾られた、華展のポスターを大画面にしたレリーフ作品です。